アフリカ思い出話

呪術・イニシエーションの魔術:その2

今日もまたまた呪術&イニシエーションのお話です♪

マリには1年に一度、コモと呼ばれる、村単位で行われる儀式(と呼んでいいのでしょうか?)があります。

コモは2日間続き、その期間中は特殊な扮装をした「コモ(精霊。もちろん人間が扮しています)」が、村中を歩き回るのだそうです。

コモの間はイニシエーションを受けた男性しか、家の外にでることはできません。
なぜなら、万が一イニシエーションを受けていない人が「コモ」を見てしまうと、死んでしまう・・・という恐ろしい言い伝えがあるからです。

イニシエーションでは様々なことが教えられるそうなのですが、その一部として特殊な言葉(暗号)が教えられ、コモに出会ったときには、その言葉を交わさないといけないのだそうです。

そして、たとえイニシエーションを受けている男性でも、もしその言葉を忘れていたりして答えられないと、やっぱり死んでしまうのだそうです!

いやはや、何とも恐ろしや。。。(^^;)

イニシエーションは男性しか受けることができないので、コモの期間(2日間)は女性と子供、及びイニシエーションを受けていない男性(ほとんどが外部の人間)は、一歩も外に出られません。

誰も死にたくありませんから、必死に家にこもり続けます。
トイレも行かれませんから、大変なんですよ~。
(だって、トイレは外にしかないですから。。。^^;)

そして、コモの少し前には近隣の村に「○○村は今度の△日と△日はコモだそうだよ」と通達が回ります。

そりゃ~そうですよね。
たまたま遊びに行ったらコモ見ちゃって死んじゃった。。。なんて、たまりませんものね~(^^;)!

私のマリ滞在中にも、コモはありました。
実は私、コモを楽しみにしていたのです。
だって中々できない体験ですから、どんなものかぜひ体験してみたいじゃないですか!

ところが!!直前に現地スタッフから、厳しいお達しが!

「コモの期間は、首都に帰っていて下さい!!」

え~~~??どうして~~~??

「ひじりは絶対にコモを覗くに違いない!!もし何かあったら、責任を追いきれないから、絶対村に近づかないように!!!」

「いいですか?絶対に村に来てはいけません!!!

そんなぁ~(>_<) 一生に一度あるかないかのチャンスなのにぃ~?
というわけで、コモの数日前にすごすごと首都に戻ったのでした。

といいますのは、実は以前にこんなことがあって、スタッフも心配していたし、私もちょっぴり気弱になっていたからなんです。

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それは、数ヶ月前のある晩のこと。
いつも通り夕食を終えた私は、トイレに入りました。

前にも書きましたが、トイレには屋根がありません。
土壁で周りを囲ってあるだけ。

さらにその土壁、肩の高さしかないんです。
ですから、用を足して立ち上がると、周りの景色がよく見える(笑)。

その晩もいつものように立ち上がると、ちょうど顔を向けている方向のちょっと先、4~500mも行ったところでしょうか。

大きな大きな焚き火が焚かれ、火を守る大人たちのほかに、ジュニア位の年齢の子供たちが沢山集まり、火のついた枝(?)を貰っているんです。

そしてその火を持って、アチコチに散らばっていくのです。

「何だろう・・・♪」

私は何をやっているのか見るために、スタッフ宿舎の敷地を出ようとしました。
すると!

血相を変えた男性スタッフのイブラヒムが飛び出してきて、

「ヒジリサンッ!!!ダメダメッ!!」

と通せんぼをするではありませんか。

「あっちで焚き火しているみたい。見に行きたいの」

「シ~~~~~ッ!!!」

イブラヒムはすごい形相で人差し指を口の前に立てて、黙るように合図しました。

「ヒジリサン、見たことは絶対に誰にも言ってはいけない!いいですね!!」

「どうして??」

「あれは儀式なんです。
外国人の女性のあなたは、決して見たことを人に言ってはいけませんよ。
そして今晩は、絶対にここから外に出てはいけませんよ。
いいですね!

そしてこれ以上外を見てはいけません。
絶対に見てはいけません!!」

イブラヒムのあまりの真剣さに、私は言葉も出ず、うなずくだけでした。

「見ちゃいけないって、一体何だろう。。。?」

その夜。。。

「今夜は窓は絶対開けないように」
「外を絶対見ないように」

と念を押され、トタンで作られた窓(ガラスはついてません)をピッタリ閉めきり、蒸し暑い部屋の中でウトウトし始めたとたん。。。

「Hwooooooooo——- Hwooooooooooo———-」

何とも形容しがたい、不思議で不気味な声が聞こえてきました。

獣のような、風のような、まるで人の声とは思えない、叫び声。。。。

その時分かりました。
さっきの人達、あの火を持って、村中を走り回って、この声を上げているに違いありません。

「Hwooooooooo——- Hwooooooooooo———-」

すぐ窓の近くまで来ているようです。
その響きの何とも不気味なこと。。。

声は一晩中続き、ほとんど寝付けませんでした。。。

さて、翌日。
何となく身体が重いな~と思っていたら、夕方から急に熱が上がり始めました。
もの凄い寒気とともに、ガタガタ身体が震え始めたので、すぐに分かりました。
マラリアです!

車は首都に戻ってしまっていて、3日後にお迎えが来るまで村から出ることはできません。

そしてその近辺には医者はいないので、本当にマラリアかどうか、検査することができません。

西アフリカのマラリアはほとんどが「熱帯熱マラリア」という種類で、そのまま放置しておくと確実に死に至ります。
ですから3日間なんて待っていられない!

その時、たまたま運よく「ファンシダール」というマラリアの薬を持っていました。
もしマラリアでなかった場合の副作用が心配だったのですが、死ぬよりはマシ。。。と、覚悟を決めて飲みました。

但し、ファンシダールは他のマラリア薬とは違い、ゆっくり効くタイプなのです。
その前にマラリアになった時の経験から言うと、薬を飲んでから最低3日間は症状が治まらず、苦しまなくてはならないんです。。。

マラリアって血液につく寄生虫なので、その苦しさってものすごいんですよ。。。
それからの3日間は死ぬほど苦しくて、文字通り涙の3日間でした。。。トホホ。。。

マラリアも大分良くなったころ、首都から車が来ましたので、一旦首都に戻り、体調を整えることにしました。

首都バマコで出迎えてくれたのは、現地の世話役ジャワラさん(私にはお父さんみたいな方です♪)。
さっそく村でのことを話しました。

するとジャワラさんは「あぁ、あの儀式ね」とうなずいていました。

私はしょんぼりといいました。

「あの火を見ちゃったからかなぁ。。。翌日にマラリア発症するなんて。。。」

気弱な私の言葉を聞いて、自国マリをこよなく愛しながら、ヨーロッパでの生活が長いインテリのジャワラさんは笑いながら言いました。

「まさか!偶然に決まっているよ。そんなことあるわけないだろう!」

アフリカ人からそんな言葉を聞くなんて、意外でした。
でも、私にはどうしてもそうは思えなくて。。。(-_-;)

知らなかったとはいえ、掟を破って見てしまったから・・・?

あの燃え盛る大きな焚き火、そして夜中の不気味な叫び声は、今でも忘れられません。。。

その後聞いた話によると、この儀式はまだ序の口で、コモはもっとすごいそうです!

ということは、そのパワーも凄いということで、もしうっかり見てしまったりしたら、やはりマラリアどころではすまないのでしょうね。。。怖っ!

でも、それでもやっぱりコモを一度体験してみたいな~・・・と思ってしまう私です。
もっとも、コモを覗く勇気は、さすがにもうありませんが。。。(^^;)

 

 

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